8 額田(ぬかた)のダシ行事(府登録・市指定 無形民俗8)

 福知山市夜久野額田

この行事は、額田地区の氏神一宮神社の祭礼に行われるもので、上ダシ、下ダシ及び御神木の巡行からなる。

上ダシは、ダンジリとも呼ばれるように山車すなわち曳山である。

下町に一台、上町・旦(だん)に一台の二基がある。山車は、上下二段の構造で、上段はぐるぐる回転できるようになっている。その上段に作り物の人形を飾り、下段にはそれを囃す囃子方が乗り込み、宵宮と本祭に街の本通りを巡行する。囃子は、笛、鉦、締太鼓の構成で、幼少年の男子が演奏する。作り物は、毎年趣向を凝らして作るならわしであり、

平成元年度の例では、下町が野狐三次、上町・旦が水戸黄門であった。山車を上ダシと称するのは、この作り物=ダシにもとづくものであろう。

これに対し下ダシは、一種の置山で、氏子五ヶ町、下町、上町、旦、奥、向に各一基作られる。この下ダシは、農作物や木の実など秋の幸をもって、昔話や伝説の一情景を表現する作り物、すなわち野菜ダシとなっているのが特色である。

下町・・・ぶんぶく茶釜、旦・・・シンデレラ、上町・・・傘地蔵、向・・・打出の小槌、

奥・・・八俣の大蛇

これが当該年の趣向であったが、互いに出来栄えを意識し、それだけになかなかの力作ぞろいであった。それを下ダシというのは、それが地面に飾り付けられるからである。

こうした作り物を広く風流という。風流の作り物には、祇園祭山鉾のように豪華華麗な装いをこらすもののほかに、身近なありあわせの物をもって思いもかけぬ物を作り出すいき方もあった。各地に行われる菊人形の類は、こうした流れに立つ現代の風流であるが、ここではそれが野菜の作り物として伝承されてきたのである。

近くの福知山市の広小路界わいでは、カラツモン(唐津焼)を用いたダシの行事が行われていた。陶磁器が未だ珍しく貴重であった時代の風流というべきものである。ここ額田のダシの由来は定かでないが、風流の精神を今に伝える行事として貴重である。

なお、このダシにはダシ本来の心意も窺われる。風流の作り物である山や鉾は、神の依代ダシを美々しく装おうとするところに展開したものであり、そのダシは祭の終了とともに壊され焼却したり流されたりするものである。ここではダシを神聖視するといったことはないが、このダシも祭りの終了とともに焼却するきまりであり、ダシ本来のあり方を伝え残すのである。

このダシに劣らず御神木も興味ぶかいものである。御神木は、面取りをした長さ二間(約3.6m)ばかりの桧の柱である。その御神木を奉持し、青年たちが一団となって氏子各区を縦横無尽に巡行するのがこの行事である。本祭日の昼過ぎに神社を出、夜遅く帰社し御神木を本殿に突っ込む、消灯した中での神うつしをもって終了する。いま一応の順路が定められているが、なお、それがどこに「お休み」になるかは神意のままであり、氏子の各家々は、それに備えて座敷飾りをして待機するのがならわしである。

これに類する行事は、近在にはみられない。府内でも類例がないが、柱ー棒の民俗を考えるうえで注意すべきものであり、資料として貴重である。